足立朝日

Vol.188 白石 加代子「百物語」 シリーズアンコール上演

掲載:2018年4月5日号
夏の夜は三遊亭圓朝「牡丹灯籠」で

 明治から現代の日本の作家の小説を中心に「恐怖」というキーワードで選りすぐった作品を、白石加代子が朗読という形で1995年にスタートした「百物語」。
 朗読という枠を超えて、白石ならではの動きと表情により、その物語の怖さと、登場人物の心の機微を立体的に醸し出して観客を唸らせ続けた。白石のライフワークであった同作品も、2014年に泉鏡花「天守物語」をもって最終話を迎えた。「百話を語ると魔物が出る」という言い伝えにより99話で完結したが、その間、22年を費やした。
 今回、同シリーズのベストコレクションから、三遊亭圓朝の名作「牡丹灯籠」を選び、この7月にシアター1010でアンコール上演が決定した。
 構成・演出は、白石が長年の信頼を置く鴨下信一。民放時代に、名作「岸辺のアルバム」(’77年)「ふぞろいの林檎たち」シリーズ(’83~’91)を世に送り出した名プロデューサー・演出家である。
 1作ごとに全精力を使い果たす白石にとって、鴨下はいわば戦友。白石の台本は、数色のカラーで色分けされ、言葉の強弱、動作のタイミングなど、鴨下から受けた指導のあらゆる情報が書き込まれている。使い込んだ台本を前にしても、やはり「この作品を演じ切れるか」との不安に苛まれることもあり、その都度、鴨下の的確な言葉がけと演出が白石を助けてきた。
 信頼し、尊敬し合える22年間の間柄が「百物語」をより深く濃密な作品に仕上げていく。その結果を舞台で観られることは、ファンにとって至福の時間だ。
 夏の夜、この世の者ではないお露が恋しい新三郎を求めて、カラ~ン、コロ~ンと下駄の音をたてながら家に近づいてくる。想い人が幽霊であることを知った新三郎の恐怖と、お札を貼られて家に入れないお露の新三郎を恨めしく想う気持ち……。白石に、それぞれの役が乗り移る瞬間をぜひ見届けてほしい。
【日時】7月18日(水)午後7時、19日(木)公演なし、20日(金)21日(土)両日午後3時【料金】5000円(フレンズ会員割引有)、未就学児入場不可
【チケット】TEL5244・1011