足立朝日

才能ある子の成長を支援 韓道場代表 韓 光勝さん(49) 西新井本町在住

掲載:2018年6月5日号
自信が強さを創る

 「多分、日本で一番小さな道場です」。自前の場所は持たず、地域学習センターなどで教えている。
 空手、キックボクシング、K-1選手など、弟子は1000人を超える。その多くが国内で優勝し、中には世界大会で活躍する子もいるという。よほどハードな稽古かと思いきや、「今は、いかに練習時間を少なくするかに挑戦しているところ。モチベーション、やる気はいらない」というから驚く。
 理論に基づいた科学的なトレーニングのほかに、子どもたちに教えるのは「逆算」。勝った時の自分、負けた時の自分を想像させ、やるべきことを自ら考えさせる。同時に親の教育も欠かせない。試合に同行しないのもその一環で、「先生がいなくてもできる、と信じている親の子は勝てる」という。
 この独自の哲学の根本には、根性論で体を壊した自身の経験がある。空手の選手として長年厳しい指導を受けながらも、試合に勝てずケガを負ったことから疑問を持ち、31歳で大学に入学。そこで、日本テニス学会副会長の平田聰氏からスポーツ教育を学んだ。
 活動は格闘技に留まらない。常に多くを吸収しようと、貪欲でアグレッシブに駆け回る。「子どもたちの未来のために必要なのは、生きる力」との思いから、才能のある子を育てようと、昨年夏から道場をプロ化した。様々な職業を目指す子どもを多方面から援助するというものだ。自身も学費の捻出や借金の肩代わりなど、お金で嫌というほど苦労してきた。14年間続いた親の介護で孤軍奮闘した時に、「近所の他人」が手を差し伸べてくれたことへの恩返しでもある。
 道場応援者として日本料理の黒木純氏らプロフェッショナルが名を連ねる。いずれも飛び込みで面会し、構想に賛同してくれたという。「断られたらどうしようと考えない。それに一流の人たちほど、会ってちゃんと話を聞いてくれる」。真摯な熱意が伝わったからこそだろう。
 「とにかく諦めない。人生一度きり。人としての使命感を持ってやっていく方が長生きできる」。挑戦を恐れない、タフな笑顔が頼もしい。
【韓道場】水曜(江北)、木曜(竹の塚・GRAMGYM)、金曜(中央本町)、TEL090・2238・6382