足立朝日

このほど自叙伝を出した ベルトの「(株)丸正」創業者で社長 小薬 正男 さん(83) 千住仲町在住

掲載:2018年7月5日号
のんびりなんて生きられない

 千住仲町の旧日光街道沿いのロココ調の社屋が目立つ㈱丸正は、紳士物ベルトで、大手デパートにおけるプライベートブランドのシェアにおいて1位を誇る技術力を持つ企業。平成28年度には、足立ブランド認定企業にも選ばれた。
 この会社の創業者が、小薬さん。83歳にして最前線、まだバリバリだ。その小薬さんが、このほど幻冬舎から自叙伝「のんびりなんて生きられない」を出した。234頁に収められた内容は、その見出しだけ見ても「ワニを捕まえにアマゾンの奥地へ」や「ヨーロッパ進出ならず、ワインに走る」など、波乱万丈の物語。
 「いやあ、少し脱線した部分もありますが、とにかく自分の生きて来た道をしっかり残そうと思いましてね。それも『装飾』せずにありのままにです。はい」と話す小薬さん、とにかく元気だ。
 小薬さんは、茨城県笠間氏出身。貧しい農家の5男坊として生まれた環境が、その反骨精神と進取の気性を育んだようだ。高校進学をあきらめ、経済的に自立しようと、田んぼにいるドジョウを捕まえては売る、という「商売」に挑戦。「この時のドジョウビジネスで体得したものが、その後の商売の核になりましたね」と小薬さん。
 15歳で上京、浅草にある寮付きベルト工場に入社。いわゆる丁稚奉公だが、「ここから私の海山ありのベルト人生が始まったんですよ」。20歳の時(1956年=昭和31年)独立、台東区日本堤に「マルショー商店」を創業、紳士ベルト小物の製造卸売業を始めた。
今の千住仲町に来たのは1967年(昭和42年)。その後は、時の経済に翻弄されながらも、米国、中国へ進出し、東奔西走して社業拡張に全力投球した。
 ファッションデザイナーで友人のコシノヒロコさん推薦のこの疾風怒濤の一代記、まずは読んでのお楽しみ。
【メモ】「㈱丸正」は、千住仲町23-1、TEL3882・3515