足立朝日

シングルマザーを描いた映画「singlemom優しい家族。」 10月6日㈯公開 区内フードバンクで取材

掲載:2018年10月5日号
 シングルマザーとその娘の生きる姿を描いた映画「singlemom優しい家族。」が、10月6日(土)から公開される。
 シングルマザーの問題は、今や日本で6人に1人と言われる子どもの貧困とも関係がある。母親たちの抱える不安や孤独を、身近なこととして理解することが、支援に繋がる。


 映画は北海道のニセコを舞台に、仕事に就けず孤立し追いつめられた生活を送っていたシングルマザーの愛実(内山理名)と娘のエミリー(長谷川葉音)が、様々な人との出会いによって少しずつ変わっていく姿を、丁寧に描いている。
 エピソードは全て実話が元。愛実を通して、シングルマザーの置かれた社会的に不利な実情や、一人で頑張ろうとするがゆえに「シングルマザー」という呪縛にもがく女性の実態が伝わってくる。
 脚本も手掛けた松本和巳監督は、シングルマザーの実態を知って欲しいと企画。「シングルマザーがテーマではあるが、日常の皆さんにも起こっていること」と話す。
◆足立区のフードバンクで取材
 制作には、足立区でママ支援の活動しているNPO法人子育てパレット(梅島3‐4‐8-2階、TEL5888・6943)代表の三浦りささんが、脚本の段階からアドバイスするなど協力している。
 「子育てパレット」が月1回、区内在住のシングルマザーを対象に実施しているフードバンクを、日本シングルマザー支援協会の紹介で松本監督が取材。毎月通って手伝いながら母親の生の声を聞くうちに心を打たれ、今は同NPOの顧問を務めている。
 フードバンクとは、余剰食品や包装不良、規格外などにより売り物にならなかった食品、売れ残った賞味期限・消費期限内の商品など、安全上は問題がないのに廃棄される食品を譲り受け、無償で福祉施設や生活困窮世帯に提供する活動。シングルマザー家庭にとっては命綱ともなる。食品ロスの削減にもなることから、日本では2000年頃から取り組みが始まった。
 映画の中での描写はリアルだ。フードバンクを訪れたものの気の毒なほど遠慮していた母親が、スタッフにやさしく勧められ、少しほっとした表情になって食品を持ち帰る。利用者の様子や身なり、スタッフとのやり取りなど、実際に監督が見聞きしたものが再現されている。
 「まるで、現場をそのまま撮ったかのようでビックリした」と三浦さん。涙なくして見られないシーンだという。「利用者は変わっていく。この人、大丈夫かなと思っていたお母さんが、心を開いて相談してくれるようになった」。助けてもらえる、助けを求めてもいい、という実感は、母親と子どもにとって精神的にも大きな支えとなる。
 シングルマザーでない人も来てしまうのでは、と聞かれるが、それはないそうだ。「1カ月に1回、決まった時間に確認して来るのは、本当に困っているから。シングルマザーだけの問題ではない」と三浦さんは話す。
 今、弱者を置き去りにする社会になりつつある。人の痛みを知り、少しでも出来ることをして互いに助け合うことこそが、健全で安心できる社会を創ることに繋がる。
 映画の収益の一部は、シングルマザー世帯の子どもたちのために寄付される。社会問題を「共有」し、利益が出たら社会に還元することを目指している松本監督による新しい形の社会貢献型映画スタイルへの挑戦でもある。
◆映画「singlemom優しい家族。a sweet family」
 10月6日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかロードショー。
〈出演〉内山理名、阿部祐二、石野真子、木村祐一

写真上/左から娘エミリー役の長谷川葉音、主演・愛実役の内山理名、松本監督=試写会(渋谷ユーロライブ)で
中/映画制作を支えた仲間たち。後列右男性が松本監督、その前が三浦さん=同