足立朝日

Vol.200 わらび座「ジパング青春記~慶長遣欧使節団出帆~」

掲載:2019年4月5日号
「夢」を積んで共に出航!

 この6月、わらび座がシアター1010で「ジパング青春記~慶長遣欧使節団出帆~」を上演する。同作品は、2017年に秋田・わらび劇場において全164回を上演。物語で重要な役割を担う支倉常長の名前を冠にした「みやぎの子どもたちをミュージカル『支倉常長』に招待する実行委員会」の協力により、昨年は宮城県内の小中学生1万人が同作品を観劇した。
 「愛・命・再生・夢・希望」を制作の軸として、地域に根差した舞台創造を68年間、東北秋田から発信し続けてきたわらび座が、同作品初の東京公演として東日本大震災から8年目の今、三度の上演に踏み切る意義は深い。
 慶長16年(1611年)、三陸沿岸は大地震と大津波に襲われた。全てを失い、石巻の海岸を彷徨うリウタは、村人に大量の木の切り出しを命じる仙台藩初代藩主・伊達政宗の意図が解らず反発を覚える。しかし、それからわずか2年後、政宗は、サン・ファン・バウティスタ号を建造し、支倉常長らを慶長遣欧使節としてローマに送った。その目的は何か? リウタの運命は……。
 リウタを演じるのは、わらび座の若きスター、小山雄大。東京都あきる野市出身の小山とわらび座との出会いは、小山が学ぶ和太鼓の指導者がわらび座の役者であったこと。さらに、小4で観た同座の舞台に憧れて、2011年に研究生となり才能を開花させた。現在は「その役の立ち振る舞いは勿論、心が大事」との想いで、主役を張る役者として活躍中だ。
 物語の進行役は椿千代。現代と400年前を自由に往来する猫・どてらを演じるが、どてらのルーツもまた感動的だ。さらに、椿は旅の一座の座長・お京にも扮するが、同じ役者が演じているとは思えない見事な演じ分けを披露。わらび座の元役者である父と、元照明技術者の母の血を引いた根っからの舞台人だ。椿の作品についての勉強ぶりは凄まじく、そこから得た膨大な知識が、椿の演技を不動のものとしている。常に被災地に心を寄せる役者たちと共に、「夢」を積み残すことなく、観客もいざ出航!
【日時】6月7日(金)午後6時30分▼8日(土)午後2時【料金】前売6000円【チケット】TEL5244・1011

写真上/小山雄大 撮影=舟橋陽馬氏(根子写真館)
下/椿千代 撮影=コンドウダイスケ氏