足立朝日

初の全国大会入賞 新体操クラブ「TESORO」指導者 吉田 桃子 さん(39) 保木間在住

掲載:2019年11月5日号
「諦めないことを教えたい」

 わずか2分半の演技。それを何度も何度も繰り返す。試合は華やかに見えるが、日々の練習は同じことの積み重ねだ。
 「新体操は独特の楽しさ。できないことができるようになり、点数になっていく。人と競うスポーツではないので、強い者が勝つとは限らない」。運動が苦手でも上達できる面白さがある。
 指導に応える子どもたちも笑顔を絶やさない。明るく元気な声を出し合い、チーム全体のムードを引き上げていく。地道な練習が続かない子もいるが、「下手でも一生懸命ついてきてくれる子を、コツコツ待てるかどうか。その子のダメなところもいいところにしてあげる。腕の見せどころ」と自負する。
 「TESORO」はイタリア語で「宝物」。「将来、新体操が宝物になってくれたら」との思いが込められている。
 渕一小、花畑中と足立区育ちだが、新体操は区内にクラブがなかったため草加市のチームに通い、与野高校、東京女子体育大へと進んだ。「足立区に関連のないところで新体操をしていたので、足立区で育てたい」と2003年4月に設立。「やっとチームの土台が出来た」と実感する中、10月、全国大会でメダルを獲得した。当初から運営を親身に支えている、母親たちの力も大きい。
 漫画「タッチ」の南ちゃんに憧れて、新体操を始めたのは小3頃。中学生までは「上手くなる方法がわからず、自分の演技が大嫌いだった」。高校で上手な先輩に出会い、自分のやり方を見出してから急成長。高2でインハイに初出場、00年のシドニー五輪候補選手にも選ばれた。出場は叶わなかったが、「行ける、行けないの境目を経験させてもらった。続けたことは財産」とカラッと話す。
 とにかく、明るく良く笑う。周りを元気にするエネルギーを発しているが、意外にも「根暗です」。いじめに遭った時代もあり、「下を向いていたのを、誰かに引き上げて欲しかった」という。その時の経験が、今の根気強い指導に繋がっている。
 4月に女の子を出産、新たな宝物を得た。毎日、赤ん坊を連れての指導だが、先輩ママの母親たちが面倒を見てくれる。
 「一つのことを長く続けていくことを一番に教えたいので諦めない。私も子どもたちも、頑張る精神を養っていきたい」。前を向く笑顔に、しなやかな強さがある。