足立朝日

「医療AIの夜明け」を出版した 岡田 正彦 さん(73) 水野介護老人保健施設(西新井6丁目)施設長

掲載:2020年2月5日号
人間の脳は、コンピューターで簡単にまね出来るようなものではない

 「ちまたではAI、AIと騒いでいますが、医療分野でのAIは、まだ助手のようなもの。時間がかかります」――。こう話す岡田さんは、現在、西新井6丁目にある水野介護老人保健施設の施設長を務める。
 岡田さんは、新潟大学医学部教授を2012年まで勤め上げ、同年4月に開設された水野老健の施設長になった。AIについてここまで言い切れるのは、ずっと医療分野でコンピューターを使いこなし、医療とコンピューターの関係性を追求してきたからこそだ。
 岡田さんは、京都府舞鶴市生まれ。父親は軍医で、その背中をずっと見て育った。「子どもの頃から、電気や数学が好きで、新潟大医学部に入ってからも電気や数学の勉強ばかりしていました」。まだ学生だった時、同大の脳研究所に日本に3台しかない米国のコンピューター・DECのうちの1台があり、特別に使用を許された。岡田さんの「コンピューター人生」が始まったのはこの時からだ。
 今TVで人気の米倉涼子演じる女医・大門道子が活躍する「ドクターX」でも、最近はAIがしばしば登場する。しかし、これも自らメスをふるう手術ロボットではない。あくまでも「こうしたらうまくいく」とアドバイスする役割である。
 岡田さんは言う。「神のようなプログラムを内蔵したコンピューターは、将棋や囲碁の世界では通用しても、医療の世界では無理。せいぜい、猫と犬の顔の識別が出来るレベル」。
 さらに、「人間という生き物は、30万年かけて遺伝子を育てて来た世界です。なかなか人間の脳の能力には追い付きません。病名を当てるにしても、そのデータの蓄積が大変」だとも言う。岡田さんの結論は「人間の脳は想像を超えた能力を備えていて、コンピューターで簡単にまねできるようなものではない」。これは岡田さんの限りない勝利宣言である。
【メモ】岡田正彦著「医療AIの夜明け―AIドクターが医者を超える日―」は、オーム社から税別1800円