足立朝日

「千住の芭蕉翁顕彰会」会長になった 足立区俳句連盟会長 小谷 武生 さん(79) 西新井栄町1丁目在住

掲載:2020年3月5日号
俳句は足立区の財産です

 「烏瓜むんずと山を引きにけり」(武生)――。「この句は、私が中年の頃に、福島・棚倉の実家に車で行った時、車を停めた場所で詠んだ句です」と話し始めた小谷さん、「道端に烏瓜がなっていたんです。それを獲ろうと引っ張ったところ、まるで後ろに控えている山を引く手応えを感じた、といった句です」。
 区俳句連盟として、千住のシアター1010の講演会に招いたことがあるという故金子兜太氏の俳句に「句風が似てますね」と言うと、「兜太は好きですね。素晴らしい俳人です」。この講演会には区民が600人も集まったという。
 小谷さんは、一昨年、これまで26年間会長を務めてきた青山丈さんに代わって、第5代目の足立区俳句連盟会長に就任。昨秋には、飯島弘さんの死去に伴い、第2代の「千住の芭蕉翁顕彰会」の会長になった。
 足立区俳句連盟の会員は、約160人。特に会費を集めたりはしていないが、毎年春と秋に大会を開催し、その参加者がほぼ会員だそうだ。この大会は、昭和25年(1950年)から続いていて、東日本大震災のあった2011年の春の大会が中止になった以外は、何と今年の5月5日(火・祝)の大会で141回になるという。この間、星野高士、井上弘美、中原道夫らそうそうたる俳人を特別選者として招へいしている。
 「これだけの人を呼び、これだけ続いている俳句連盟はないと思います。自慢です」とずっと大会開催の実務に携わって来た自負がほとばしる。
 小谷さん、実は西新井栄町にある印刷会社「鋭文社」の社長さんだ。福島・棚倉中通りに高校までいて上京、昭和40年代に同社の経営を引き継いだ。
 同社は、俳句専門の印刷社。「どんどん俳句に引き込まれて行ったんです。それだけ、俳句の魅力がすごいというこでしょうか」――。
 現在、梅田亀田町会の会長も12年目に入り、地域活動に力が入る。これまた大好きなお酒を友に、むんずと「俳句という山」を引き続けている。