足立朝日

Vol.213桃月庵白酒 独演会~笑う門には福来たる~

掲載:2020年8月5日号
涼やかな声で濃厚な本格古典落語

 優しい眼差しとキュートな笑顔。噺にも風貌にもますます風格が加わった桃月庵白酒が、シアター1010に登場する。題して、千住落語会vol. 18「桃月庵白酒 独演会~笑う門には福来たる~」。
 鹿児島出身の白酒は、名門校県立鶴丸高校から、早稲田大学社会科学部に進学。落語研究会に所属したことで落語の面白さに目覚めた白酒は、周囲が就職活動に追われる中、迷うことなくこの道を選択。自称「声フェチ」の白酒は、五街道雲助の声に惚れ込んで入門を希望した。学業優秀な白酒としては、「落語がダメなら勤めればいい」という目論見があったようだが、いざ入門願いをする段階では、「このまま落語家になってしまって大丈夫か」と不安になり、師匠の自宅前を長期間ウロウロ。そんな白酒を雲助は温かく迎え入れ、1992年に自身にとって初の弟子が誕生した。
 その後の活躍が目覚ましい。1995年、二つ目となり、「はたご」から「喜助」に改名。2005年に真打に昇進し、三代目「桃月庵白酒」を襲名する。受賞歴も鮮やかだ。1999年、北とぴあ若手落語家競演会奨励賞、2005年 第10回林家彦六賞、2011年・平成22年度国立演芸場花形演芸大賞、同年・平成22年度彩の国落語大賞など。
 2014年には、国際交流基金「文化芸術交流海外派遣助成」事業を受けて、スイス、チェコ、オランダ、デンマークで高座を行い、粋な日本文化をグローバルに広めた。
 落語以外の活動も盛んだ。第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門の作品賞を受賞した「ももいろそらを」では、小林啓一監督にその独特な面白さと雰囲気を気に入られて「印刷屋のおやじ役」で出演。同監督による「ぼんとリンちゃん」では、友人探しに奔走する主人公に協力するネットカフェの住人をほっこりと好演した。
 高座では、耳に心地よい涼やかな語り口で、大爆笑のマクラからクセのある登場人物へするりと移行し、本格古典落語の世界をたっぷりと堪能させてくれる。政府の感染症対策の基本方針による収容率に沿うため、昼・夜2公演に分けて臨席での開催。安心して楽しめる。
【日時】10月7日(水)午後2時・6時30分
【料金】全席指定3800円、足立区民・フレンズ会員割引有、未就学児入場不可【チケット】TEL5244・1011

写真/©橘蓮二