足立朝日

子どもの貧困問題に取り組む Autonomos合同会社 代表 栗野 泰成 さん(29) 千住柳町在住

掲載:2020年8月5日号
行政の手が届かない人を支援

 住んでいるのは、6月1日にオープンした千住の個性的なシェアハウス。JICA青年海外協力隊の関係者や志願者向けのシェルターとして、R65不動産の山本遼社長と共同で運営している。「コロナで派遣待機となった人たちが、力を蓄える場所になれば。子ども支援に力を使って欲しい」と家賃は低く設定。国際協力や教育に関心のある仲間との交流の場でもある。
 活動の根幹にあるのは「子どもの貧困問題」。仕事、ボランティアの両輪で取り組んでいる。
 以前、貧困家庭の教育支援を目的に、低料金で幼児向け英語教室を開講していたが、フタを開けてみると来るのは教育熱心な親と教育レベルの高い子どもばかり。支援したい人たちは情報そのものにアクセスできないと気づき、今年1月からひとり親家庭に無料で食品を届けるボランティア活動「あだち・わくわく便」を始めた。現在約50人が利用している。
 子どもの貧困に取り組むきっかけとなったのは、小学校勤務を経て、環境を変えたいと参加した海外青年協力隊。エチオピアで子どもたちの過酷な状況を目の当たりにし、自分の恵まれた環境を痛感した。「生まれた場所が違うだけで人生が左右されている現実を知って、自分にできることがあるんじゃないかと」。そこに至る根底には、自身も父親が借金を抱える家庭に育った苦労もあった。
 新しいことに挑戦する背中を押してくれたのは、区内の先達たちだ。「何十年も子ども支援をされている方が、新しいことやりなよ、頑張りなよと、温かく受け入れてくれてありがたい。足立区の人柄ですかね」
 次第に課題も見え、ボランティアに限界があることから、新たにAutonomosのビジネスとして情報サービス「ちょいフル」(詳細は別記事)を立ち上げた。行政の助成金や民間の支援サービスなどの情報を、無料で子育て家庭に提供するものだ。企業や自治体の広告により利益を生む仕組みで、持続可能な事業に育て支援を充実させたいと考えている。
 「大学の時みたいに何やっていいかわからなくて、幸せじゃないと世の中に不満を持っていた時に比べて、自分で変えられる範囲が増えてきた。より生きがいが持てる人生になったかな」。柔軟な考えをタフに実現していく若者の笑顔が頼もしい。

写真/中央が栗野さん。シェアハウスのメンバーと