足立朝日

この本

掲載:2021年3月5日号
★「論語と算盤」渋沢栄一著/角川ソフィア文庫(760円+税)
 2024年に紙幣デザインが一新される際、1万円札の新たな肖像画は「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一となる。
 1984年に肖像画が聖徳太子から福沢諭吉に代わって以来、40年振りの刷新となることから、世間が大注目することとなったが、今回、2021年大河ドラマ「青天を衝け」として放送がスタートし、今や渋沢ブームが到来している。
 1840年、現在の埼玉県深谷市に生まれた渋沢は、一橋家の家臣、次いで幕臣となる。67年には徳川昭武に随行して、ヨーロッパ諸国を歴訪。維新後の69年には、明治新政府に仕官し、民部省、大蔵省に属した。73年に健全財政を主張して辞任後は、第一国立原稿をはじめ、指導的立場で500社前後の企業の創立・発展に貢献。
 また、商工業の発展に尽力。経済団体を組織し、商業学校を創設するなど実業界の社会的向上に努めた。70歳で退任した後は、社会公共事業の育成・発達に努め、国際親善に力を入れた。
 同書は、渋沢の人生を通じて得た知識・思想・体験などから生れ出た経営哲学書で、ビジネスマン必読の書。「処世と信条」「立志と学問」「常識と習慣」「仁義と貧富」「理想と迷信」「人格と修養」「算盤と権利」「実業と士道」「教育と情誼」「成敗と運命」の10章からなるどの内容も、社会を変革し、動かし続けた渋沢の想いが詰まっている。