足立朝日

足立区初 「ヤングケアラーシンポジウム」 オンライン開催

掲載:2021年9月5日号
 足立区初の「ヤングケアラーシンポジウム」が8月22日(日)、竹の塚地域学習センターにおいてオンラインで開催された。
 第1部は、一般社団法人日本ケアラー連盟理事で、立正大学社会福祉学部の森田久美子教授による講演。「ヤングケアラー」とは、家族のケアや介助、サポートを日常的に提供する18歳未満の子どものことで、大人が担うようなケア責任を引き受けている現状がある。家族への忠誠心や、相談する場所が判らない等の理由により、公的機関の視覚から隠れているために、必要な支援を得られずにいる。
 森田教授は、イギリスのヤングケラーの現状や、日本の調査報告から見えてきた課題等について話した。
 第2部は、図書館司書の吉田倫子さんの司会で、あだち子ども支援ネットの大山光子代表、ハートベースの平島芳香さん、ソーシャルワーカーの橋本久美子さん、森田教授が意見交換を行った。
 元ヤングケアラーの平島さんは、統合失調症の両親や幼い妹の世話、家事に加え、小1から家庭代表として地域活動に参加。大人が発する「偉いね」の呪縛から逃れられず、「助けて」と言えなかった。使用人として過ごす日々の中で、平島さんの唯一の居場所は図書館だった。現在、自身が立ち上げた「ハートベース」で、「現場の声を公に伝えること」「同じ立場の仲間たちと感情を共有して、心の回復を図ること」を目指して活動中だ。
 様々な環境の中で生きる子どもたちに30年寄り添い続けてきた大山代表は、「子どもたちの環境が人生を左右する」ことを痛感。「夢」を持てない子どもたちの現状に触れた。「ヤングケアラーについては、その言葉が先走るブームにしてはいけない。支援の前に理解することが大事」と力強く話した。
 橋本さんは、ソーシャルワーカーのバックグラウンドとして「依存症の回復と女性支援」を挙げた。その中で、個人や集団が、自分の人生の主人公となれるように力をつけ、自分自身の生活や環境をコントロールできるようにする「エンパワーメント」について力説。「当事者が生活経験の中で生き延びるために得てきた知識に、支援者が学ぶ必要がある」と話した。
 森田教授は「支援というよりも、相手が必要としている内容を、周囲が理解して行えるような関係性が大切」とアドバイスを送った。
 当日の動画は、同センターのホームページから
9月30日(木)までYouTubeで配信。
 なお、竹の塚図書館、やよい図書館で「ヤングケアラー関連本」を特集している。

写真上/森田教授
中/左から吉田さん、大山代表、平島さん
下/橋本さん