足立朝日

羅針盤 VOL.122

掲載:2021年11月5日号
 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまるたるためしなし……」
 選挙の結果が出るたびに、教科書にも必ず掲載されている鎌倉時代に書かれたこの名文を思い出す。「枕草子」「徒然草」と並ぶ日本三大随筆のひとつ、鴨長明の「方丈記」の冒頭部分だ。
 何とも言えない無常観、世の中が進歩、退歩を繰り返しながら発展、進化していくこの弁証法はすごい。
 11月1日(月)朝、少なからぬ政党と候補者と、そして投票した国民がこんな思いを持ったのではないか。
 前夜には京王線での無差別殺傷事件もあった。
 朝、全日刊紙を買って読んだが、今回ほど「勝った」「負けた」の1面の見出しの付け方に違いが出たことはなかったのではないか? 誰もがマスク出勤やマスク登校のない日常が一日も早く戻ることを願った朝だったことは間違いないのだが。   (編集長)