足立朝日

この本

掲載:2022年4月5日号
★「おぼん・こぼん 東京漫才」おぼん・こぼん著/飛鳥新社/1430円(税込)
 関西人でありながら、東京漫才を半世紀以上牽引してきた漫才師おぼん・こぼん――。漫才は勿論のこと、英語の歌を歌い、タップダンスを踏み、サックスやトロンボーンを演奏する総合エンターテイナーとして不動の地位を築いてきた。東京に進出後、演芸場、キャバレー、高級レストラン・シアター「赤坂コルドン・ブルー」などのステージに立つ中で築いた「おぼん・こぼんスタイル」は、その圧倒的な力量で1980年代の漫才ブームを席巻。
 最近では、出演したテレビ番組の影響で「仲直りした不仲の漫才師」として不本意な脚光を浴びることになってしまったが、テレビでは語られることがなかった「2人のそれぞれの真実」が、同書で初めて明かされる。
 高校時代にコンビを組んでから57年間の軌跡は凄まじいものであるが、周囲から愛され、苦労を跳ね飛ばして前進し続ける姿が爽快だ。
 長い年月の間に徐々に積み重なった「不仲」の原因は、同書では語り尽くせないと推察するが、「おぼん・こぼんの2人がいて初めてエンターテイナーとしての漫才が成り立つ」ことを改めて認識した2人が、「プロフェッショナルとして仲直り」し、命ある限り2人で漫才を続けていこうと決心するプロセスが清々しい。今後、どのような舞台を見せてくれるか、声援と共に期待したい。
 もし今、あなたに不仲な相手がいて苦しい時や「生き方」で悩んだ時は、ぜひ同自叙伝的回顧録を薦めたい。