足立朝日

サン・モードスタジオ代表取締役 モデリスト/現代の名工 柴山 登光 さん(77) 梅島3丁目在住

掲載:2023年1月5日号
洋服のプロフェッショナル 足立に在り

 今や「文教都市」と言われる足立区は、人材の宝庫でもある。その中で、紳士服では初めて2019年度「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働大臣から表彰された柴山登光さんは、日本のトップ・モデリストと呼ばれる存在である。
 モデリストとは、デザイナーや企画担当者の意図するところをパターンに表現し、裁断・縫製・仕上げのポイントなどを生産現場へ指示・説明を行い、最終製品に対して品質・技術面で責任を負う技術者のこと。本場イタリアでは、工場を立ち上げるに当たり、まず優秀なモデリストを探すことから始めるという。
 柴山さんは現在、サン・モードスタジオ代表取締役として経営に携わる傍ら、日本モデリスト協会会長、IACDE(国際衣服デザイナー&エグゼクティブ協会)国際会員及び日本支部理事、セコリジャパンスクール講師長、メンズものづくり塾塾長などを務める。
 IACDEメンズスーツ・レディース部門の最優秀賞「ミケランジェロ賞」を計3回受賞という快挙を成し遂げた上、東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞受賞(2016年度)など、その深い知識と高い技能が国内外で高く評価されている。
 これまで、テーラー9年、縫製工場12年、アパレルメーカー16年、独立して25年目で計62年、この業界で活躍し続けている。大手セレクトショップのビームスのスーツを22年以上監修する他、縫製工場3社の技術顧問など、多くの重要な役割を担ってきた。
 その間、仕事とプライベートを兼ねて35カ国を訪問。その国の文化を吸収し、感性を磨いてきた。
「目指すのは、イタリアのサルトリア(伝統的な仕立て技術を持つテーラー)ナンバーワンのモデリスト、チェザーレ・アットリーニ。技術も人格も素晴らしく、あのようなモデリストになりたい」――柴山さん自身がトップ・モデリストと言われながら、さらに上を目指して努力と研究を重ねる。後進のために、知識と技術を惜しみなく伝える姿は、この業界の憧れの的となっている。