足立朝日

大渕澄夫の千住スケッチ散歩<第2回>

掲載:2024年6月5日号
牢屋奉行と源氏物語
―西光院で源氏物語全巻を注釈―
千住曙町27-1(西光院)石出帯刀常軒の墓と碑


 千住の寺は旧日光街道沿いに多い。堀切駅そばに牛田薬師西光院(イラスト下)が建つ。本堂の扁額は千葉山とあり、千葉氏ゆかりの寺である。
 参道西端に牢屋奉行の石出帯刀常軒(同上)の墓がある。側には元禄4年に子息師深が建てた碑が立つ。風化した石からは文字を拾い読みすることは困難だ。
 明暦の大火で火の海と化した江戸市中で、小伝馬町の牢屋奉行は120余名の囚人を解き放し、焼死を防いだと云う。この火事で江戸城天守閣は焼け落ち、死者は10万人を超したと伝わる。
 石出常軒は晩年西光院に隠居して、好きな源氏物語全巻の注釈書を完成させた国学者でもあった。NHK大河ドラマで紫式部が描かれる中で、千住と源氏物語つながりは貴重な歴史物語でもある。