足立朝日

千住スケッチ散歩<第3回>

掲載:2024年8月5日号
消えた横綱銭湯
 ―保存、移築で一部が安養院で再生―
千住寿町32-6 大黒湯


 一昨年、病院帰りのタクシーの窓から工事塀で囲まれた大黒湯を見た。
 私はタクシーを降りて工事看板を見、近所の人に改装工事かを確かめてみた。答えは「解体だよ」。聞いてあ然とした。
 後日タクシーの窓から解体している姿を目にした。何回も自転車を走らせて利用した銭湯、スケッチの生徒たちと一緒に描いた思い出が、いっぱい詰まった銭湯だ。
 昭和4年(1929年)竣工というから北千住NTTビルと同い年生まれだった。唐門破風部は安養院(千住5-17-9)のご住職様の優しい心で保存、移築が決まり私も工事現場に何度も足を運んでみた。
 大黒湯を守る会、そしてクラウドファンディングなどの方々のお力で昨年移築再生の落成式が行われた。
 安養院への散歩で客殿入口の唐破風部を見た時、私は良かったねと声をかけてみた。少し目頭が熱くなった。