足立朝日

1300年前に思い馳せ 一流の和文化体験 「足立姫フェスティバル」 千住で12月18日(水)・19日(木)

掲載:2024年12月5日号
 足立区の昔話「足立姫伝説」の誕生から1300年。それにちなんだイベント「足立姫フェスティバル」が、12月18日(水)・19日(木)の2日間、千住で開催される。

 主催は千住旭町の築80年の古民家を拠点に、和文化体験活動をしている路地裏寺子屋rojicoya(米本芳佳代表)。足立区の隠れた魅力を世界に伝えたいと、インバウンド向けに「足立姫と五色桜のまち足立:千住宿400周年に蘇る時を越えた伝説と特別な体験による町おこし事業」を立ち上げ、観光庁の採択を受けている。
 足立姫伝説は約1300年前、足立の長者の娘・足立姫が嫁ぎ先の豊島で義母に虐げられて川へ身を投げ、下女12人も後を追ったという悲運の物語。 姫の父が娘の魂を弔うため和歌山県の熊野権現で授かった霊木を海に投じると、足立に流れ着いた。その木に僧侶・行基が6体の阿弥陀仏を彫り、現在の足立区・荒川区の6つの村に安置して供養したという。ゆかりの寺・性翁寺(扇2‐19‐3)の本尊「木余り菩薩」は、余り木に彫られたと言われている。
 江戸時代にはこの六阿弥陀巡りが観光の一つになっており、花見と併せて1日で回れる距離であることから、特に女性たちに人気だったようだ。
 「悲しい伝説だが、来世では幸せになれるという福が込められている。ストーリーがあることで、ドラマやアニメの舞台を巡る現代の聖地巡礼のようなものだったのでは」と米本さん。〈ストーリー〉に人を動かす力があることに着目し、外国人にアピールできると考えた。
◆インバウンドで和文化を残したい
 なぜ、千住でインバウンドなのだろうか。米本さんは「千住の街が好きなんです」と即答。「それがコロナ禍を経て、ユニークな店や昔ながらの建物が無くなっていっている。伝統工芸などの和文化も、将来性を考えて弟子を取らない人が増えていて、このままでは消えてしまう。昔からあるものは一度壊したら戻らない」。伝統文化や伝統工芸が優れていても、それを担う人が生業として続けていけなければ残すことは難しい。海外の人たちに注目、評価されて価値が高まっているものも多く、米本さんは期待をかける。
 「北千住は外から来た人を受け入れる寛容性がある。異文化を受け入れ、新しい交流・文化を楽しみ、よりよい共生ができるのでは」
 最近は、浅草やスカイツリーに近いとことから、千住の民泊を利用する外国人が増えている。彼らは「こんなに便利でユニークな街があったんだ」と喜ぶ一方、もっと街を散策したいのに情報が少ないと話していたという。せっかく訪れてくれた千住を、味わってもらえないのは確かに勿体ない。
 各地でオーバーツーリズムが問題になっているが、米本さんはろじこやをトラブルに対応できる窓口にしたいとも話す。
 今回のイベントは、外国人向けの有料ツアーもあるが、誰でも入れる「お寺前ステージ」「屋外エリア」には、伝統芸能や伝統工芸の一流のプロが揃う。「この機会に本物を地域の人に公開したい。普通はお金を払わないと見れない一流のパフォーマンスを、無料で間近で見てほしい」

写真上/東京芸術センターでは新作オペラ「足立姫」を上演
中/響ファミリーのキッズが扮した足立姫のパレードも
下/喜田家の和菓子「足立姫」

<イベント詳細>
▽お寺前ステージ(正午~)、慈眼寺(千住1-2-9)=獅子舞、民謡、津軽三味線、殺陣、サムライ忍者ショーなど。千住在住の振付師・パーツイシバ氏も出演(入場無料)
▽屋外エリア(午前11時~)、同寺境内=足立姫クラフトビール、和菓子「足立姫」、伝統工芸士によるシルバーリング作り体験・江戸刺繍体験、だるま作り体験、和笛篠笛体験(有料)など
▽足立姫パレード(午後1時20分~)=歌踊演舞一座・響ファミリーが扮した美しい足立姫、獅子舞、侍などが慈眼寺から商店街を練り歩く
▽新作オペラ「足立姫」=午後6時~、東京藝術センター・天空劇場(有料)


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