足立朝日

この本

掲載:2025年2月5日号
★「大江戸花形絵師競 おもしろすぎる! 浮世絵案内」堀口茉純著/山川出版社刊/2200円(税込)
 海外人気の影響もあり、日本でも近年、注目されるようになった浮世絵。大河ドラマ「べらぼう」の主人公が、版元として数々の絵師を世に送り出した蔦屋重三郎とあって、今年は新たな浮世絵元年になりそうだ。
 浮世絵と一口に言っても種類は様々。版画と肉筆があるのはなぜ? 錦絵と同じ? そんな基礎的なことから詳しく、この本ではわかりやすく教えてくれる。
 江戸文化歴史検定1級を最年少で取得した著者が、「江戸人よりも浮世絵を楽しみたい」と、絵師の個性にスポットを当てて情熱を結集。2013年刊行の「UKIYOE17」(中経出版)に加筆修正した新装版で、東洲斎写楽、葛飾北斎など誰もが知るスター絵師16人と、蔦屋重三郎の生涯やそれぞれの作風が紹介されている。巻頭のカラーページの「この絵師、この一枚」では、作品の背景や推しポイントを解説。本文を読んだ後に、再鑑賞すると、より深く味わえる。
 絵師たちの性格や生い立ち、デビューのエピソードがイマドキの言葉で表現されていて、楽しい。歌麿の髪の描き方は「毛フェチ」、写楽の人気の理由は「デフォルメ」など、すんなり頭に入ってくる。絵師へのツッコミを描いた、イラストや2コマ漫画も見逃せない。
 幕府の政策に翻弄された大衆文化や庶民の生の姿、現代にも通じるキャラクタービジネスの源流が垣間見え、大河ドラマや浮世絵鑑賞が何倍も楽めること間違いなし。