★「抗がん剤を使わなかった夫 ~すい臓がんと歩んだ最期の日記~」倉田真由美著/古書みつけ刊/1650円(税込)
「がん」は今や身近な病となり、誰しも一度は考えたことがあるだろう。もし自分や身内だったら、後悔しない治療を選べるだろうか、と――。
「気がつけば○○」の「古書みつけ」が、シリーズとは別の形で新たに出版したのは、これまでなかなか公表されてこなかった「抗がん剤を使わない選択をした人」の生き様と、その家族の640日間の記録だ。
2024年2月に亡くなった映画プロデューサーの叶井俊太郎氏はすい臓がんを患うも、抗がん剤や手術をしないことを自ら選び貫き通した。漫画家・エッセイストの著者は夫のその決意を受け入れ、支えながらともに歩んだ1年9カ月の日々を飾らない言葉で率直に綴る。本書の冒頭で執筆の動機を「夫のように以前と変わらない生活をしながらがんと闘わない、抗がん剤を使わない人がどういう経緯を辿るのか」という情報を一例として知って欲しいと述べている。
驚くべきは叶井氏のバイタリティー。好きなこと、やりたいことだけを、実に自由にどんどん選び取っていく。体にいい食事なんて考えもしない。カップ麺や、深夜に甘いものもたらふく食べる、不健康食生活のオンパレード。かと思えば、自転車で出かけていって精力的に大好きな仕事を続け、家では死んだふりをして妻を笑わせる。最期の前日までシャワーを浴びて髭を剃り、日常生活を送る。理想的な姿と言えるかもしれない。
がんの種類も症状も体力も人それぞれであり、最適な選択は異なる。これが正解でもなく、勧めようというものでもない。しかし、病を恐れるあまり慎重になりすぎて悲観して過ごすだけでなく、自分で選ぶ生き方があっても良いのではと思える。
日記の中で何度も記される「そんな夫が好き」の言葉。2人の関係性が読後にやさしいものを残す。病に向き合う人だけでなく、人生の癒しと励みになる1冊。
「がん」は今や身近な病となり、誰しも一度は考えたことがあるだろう。もし自分や身内だったら、後悔しない治療を選べるだろうか、と――。

2024年2月に亡くなった映画プロデューサーの叶井俊太郎氏はすい臓がんを患うも、抗がん剤や手術をしないことを自ら選び貫き通した。漫画家・エッセイストの著者は夫のその決意を受け入れ、支えながらともに歩んだ1年9カ月の日々を飾らない言葉で率直に綴る。本書の冒頭で執筆の動機を「夫のように以前と変わらない生活をしながらがんと闘わない、抗がん剤を使わない人がどういう経緯を辿るのか」という情報を一例として知って欲しいと述べている。
驚くべきは叶井氏のバイタリティー。好きなこと、やりたいことだけを、実に自由にどんどん選び取っていく。体にいい食事なんて考えもしない。カップ麺や、深夜に甘いものもたらふく食べる、不健康食生活のオンパレード。かと思えば、自転車で出かけていって精力的に大好きな仕事を続け、家では死んだふりをして妻を笑わせる。最期の前日までシャワーを浴びて髭を剃り、日常生活を送る。理想的な姿と言えるかもしれない。
がんの種類も症状も体力も人それぞれであり、最適な選択は異なる。これが正解でもなく、勧めようというものでもない。しかし、病を恐れるあまり慎重になりすぎて悲観して過ごすだけでなく、自分で選ぶ生き方があっても良いのではと思える。
日記の中で何度も記される「そんな夫が好き」の言葉。2人の関係性が読後にやさしいものを残す。病に向き合う人だけでなく、人生の癒しと励みになる1冊。