足立朝日

Vol.69-王女メディア -松井 誠-

掲載:2008年5月5日号
 演劇史上最高の悪女と言われる「王女メディア」が5月14日、シアター1010に登場。古代ギリシャのエウリピデスによるギリシャ悲劇の幕が上がる。美しく着飾ったメディアの正体は、大衆演劇で華麗な女形と立ち役が評判の「誠」座長・松井誠。
 昨年のNHK大河ドラマ「風林火山」では北条氏康を演じ、一挙に男性ファンも獲得したが、その雄姿とは対照的に、ロングドレスに身を包み、不敵の笑みを浮かべながら「女はどんな悪事も許される」とつぶやく姿も格別だ。稽古は終盤を迎え、松井の中にメディアの激情の血潮がドクドクと流れ始めている。上演台本は、斬新な企画で世間を驚かせるプロデューサーの笹部博司。演出は、シェイクスピア能を確立した異才・栗田芳宏。美術は朝倉摂、ほか豪華スタッフが揃う。
女はどんな悪事も許される
 物語は案内役(赤坂泰彦)によって語られる。コルキスの王女メディア(松井)は、夫イアソン(山崎銀之丞)が自分と子どもたちを捨てて、コリントス王クレオン(菅生隆之)の娘と結ばれることを知り、3人への復讐を決意する。アテナイ王アイゲウス(菅生二役)に言い寄ったメディアは、自分の擁護を約束させ、クレオンと娘を猛毒で殺害。さらに夫への見せしめのために、我が子をも殺めてしまう。

 子どもへの愛、夫への愛と憎しみが錯綜し、胸が張り裂けんばかりの激情を、松井は声音と目線を匠に操り、全身からほとばしらせる。海外作品に初めて巡り合った松井は、「我が子を殺めるに至った心の動きを、丁寧にじっくりと演じたい」と話す。我が子殺害を決意する前後には、メイクも衣装も大きく変えて臨む。
上演期間=5月14日(水)~18日(日)。料金=S席7000円、A席5000円、B席2000円。チケットTEL5244・1011。