足立朝日

Vol.67-読む!書く!創る! 松尾芭蕉編 -イッセー尾形-

掲載:2008年1月5日号
 過去2回のシアター1010公演で、数々の「フツーの人」を演じたイッセー尾形。観客を共感と笑いの渦に巻き込んだ舞台が、三度千住に登場する。
 今回のテーマは「イッセー尾形の読む! 書く! 創る! 松尾芭蕉編」。現実を読み込んで、五七五の言葉に乗せるという抽象的作業で、その時代を彷彿とさせる俳句は、自身の制作活動の原点と同じ。無駄を省き、「どうやって舞台に立つの?」というテーマと向き合うと、自分にウソをついている場合は舞台でも輝かない。削いで削いで本当のものを残した時だけ、舞台で一句立ち上げられる。それが「芭蕉」を絡める理由だ。
やっぱり芭蕉だったと思える舞台に
 昨年は、イッセーの人間性をハツラツと出せるような、さりげないアドバイスを差し出してくれた小松政男との共演で、一人では出来ない世界で遊ぶことができたと喜ぶ。06年度中学国語教科書に採用されたイラスト能力を駆使して小松にイメージを伝え、それを理解する小松とは、即立ち稽古に入れると言う。
 元来、芸能人との接点を見い出せずに、人を避けるように暮らすイッセーだが、フツーに暮らしていると目に飛び込んでくる地味な人がセンサーに引っ掛かる。その断片を、持ち歩いているノートに書き散らす。それがスーパーリアリズムと言われたイッセーの、「本物っぽいけれど本物ではないフツーの人の描写」に繋がる。
 一人芝居は無限で、「私は誰? ここはどこ?」などを観客が想像してくれる。昨年は、一般人とのワークショップを通じて、地味な参加者自体の持ち味を引き出せばいいと思うようになった。ワークショップの成果は、2月10日(日)と11日(祝)、イッセーの公演終了後に1010円で観られる。詳細は「イッセー尾形」で検索を。
「芭蕉と関係ないように見えて、やっぱり芭蕉だったと思える舞台にしたい」とイッセーは笑う。国内外で年間120ステージをこなすパワフルさは、今年も全開だ。公演=2月9日(土)~11日(祝)。S席4800円、A席3800円。チケット℡5244・1011