足立朝日

Vol.66-肝っ玉おっ母とその子どもたち -大森 博史-

掲載:2007年12月5日号
来年1月、ついにブレヒト作「肝っ玉おっ母とその子どもたち」がシアター1010で上演される。ヨーロッパ各国を巻き込んだ30年戦争を、庶民の目で見つめたこの作品を、演出家の西川信廣がエンターテインメントとして描く。
3人の子どもたちを連れて、戦火の中で行商を続ける「肝っ玉おっ母」ことアンナ(草笛光子)。愚かな戦争のために、長男アイリフ(田中壮太郎)、次男スイスチーズ(鍛冶直人)、娘カトリン(鬼頭典子)を次々と失っていく。アンナと司令官付き料理人のピーター(大森博史)、娼婦のイヴェット(久世星佳)との関わりの間で、右往左往する従軍牧師(高橋長英)。司令官(坂部文昭)もスパイスを効かせる。
大森を相手に共演者エスカレート
 アンナが心惹かれるピーターは、大らかだが女たらし。その男性的魅力を、舞台でフルに見せる大森は、伝説のオンシアター自由劇場で中心メンバーとして活躍。演劇評論家で翻訳家の松岡和子が「どれだけ拍手をしてもし足りない作品」と絶賛した「上海バンスキング」は、観客の感動が直に伝わり、忘れられない作品と懐かしむ。
  自由劇場解散後、魂が抜けた状態の大森に、再び演劇への炎を燃え上がらせたのは、デビッド・ルヴォー演出の「ルル」。ロンドンの切り裂きジャック役が、あまりにもリアルで注目を浴びた。その後も、「ゴドーを待ちながら」(串田和美演出)、「三文オペラ」(蜷川幸雄演出)、「ユーリンタウン」(宮本亜門演出)など話題作に次々と出演。「貴公子っぽいけれど、どこかがおかしい役が得意」と大森はおどける。野村萬斎演出の「国盗人」では、狂言という特殊な世界での技術を持った共演者に揉まれた。
 最近では、黒柳徹子が取り組んでいる最新の喜劇「リグレッツ・オンリー」(高橋昌也演出)。世界的に有名なゲイのデザイナー役を、オネエ言葉に頼らずに、雰囲気だけで演じるという難関を突破し、大絶賛された。黒柳も大森を相手に、さらにエスカレート。同じ光景が、今作品でも草笛との絡みで見られるに違いない。
  上演期間=1月18日(金)~30日(水)。S席8千円、A席5500円、千住席1010円、足立区民割引6千円。チケット℡5244・1011。舞台稽古中の12月22日(土)には、大森が怪しげな陰陽師を演じる「魍魎(もうりょう)の匣(はこ)」ロードショー。