足立朝日

Vol.60-テネシー・ワルツ 江利チエミ物語 -島田 歌穂-

掲載:2007年8月20日号
 昭和の活気溢れる30年代に、一世を風靡した「江利チエミ」「美空ひばり」「雪村いづみ」の「3人娘」。特にチエミにスポットを当てた「江利チエミ物語~テネシー・ワルツ」(原作=藤原佑好「江利チエミ物語~テネシー・ワルツが聴こえる」)が誕生し、観客に大きな感動を与え続けてきた。この9月、シアター1010でも待望の上演が決定し、心待ちされる。
 チエミの父親は、三味線漫談の柳家三亀松の相三味線やピアノを務め、母親は「東京歌劇」出身の女優。父の失職や母の病気で、わずか13歳のチエミの肩に、一家の生活が掛かることに。戦後の復興期に、米軍キャンプ回りを通じてジャズを習得したチエミは27年、念願の曲「テネシー・ワルツ」により、14歳にしてレコードデビュー。34年には、高倉健とゴールインし、歌手としても女優としても充実していたが、46年、チエミの身内の横領事件が元で離婚。数億の借金を抱えながらも自力で返済し、57年2月、45歳という若さでこの世を去った。
チエミが舞い降りる至福の瞬間を
 波乱万丈のチエミの人生を、抜群の人気度を誇る「島田歌穂」が、そのセンス溢れる歌唱力を駆使して演じきる。島田がアイドル時代、チエミとは運命的な出会いをしている。萩本欣一司会の「家族対抗歌合戦」。チエミチームと島田チームが決勝戦で争い、島田チームが優勝を獲得。その赤い糸の不思議さを思う。島田は、毎回楽屋でチエミの写真に手を合わせ「見守ってください」と念じ、さらに舞台上では、1曲を歌う度に「これでいい?」とチエミに問いかける。その答えは、観客席を占めるチエミファンの反応が出してくれると島田は考えている。「その思いを裏切りたくない」と、1曲1曲にチエミの人生をだぶらせながら、魂の限り歌い上げる。
 チエミの父・久保益雄は「下條アトム」、美空ひばりは「月影瞳」、雪村いづみは「樹里咲穂」、清川虹子は「弓恵子」が演じる。チエミが島田に舞い降りる至福の瞬間を見逃せない。上演=9月7日(金)午後6時半のみ。S席7000円、A席5500円。チケット℡5244・1011。