足立朝日

Vol.59-江戸あやつり人形座 星の王子さま -結城 一糸-

掲載:2007年8月5日号
 江戸糸あやつり人形370年の歴史を継承する「結城座」の三代目・結城一糸。自由な発想から03年に設立した「アセファル」を通じ、もう一度古典を見直してみたいと考え、兄である田中純(元十一代結城孫三郎)と共同で「江戸糸あやつり人形座」を立ち上げた。永い歴史の中で、新たに人形と人形遣いの関係を探求しようという姿勢が、今回のシアター1010ミニシアター公演「星の王子さま」(原作=アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ、脚本・演出=大久保昌一良)への挑戦にうかがえる。
大切なものは目に見えない
 サハラ砂漠に不時着した「僕」は、ひとりの少年と出会う。彼は遠い星の王子で、大切に育てたバラと喧嘩をして地球に辿り着いた。その間に、「王」「自惚れや屋」「飲んべえ」「実業家」「地理学者」らと遭遇するが、どれもおかしな大人ばかり。巡り会ったキツネと遊びたくても、「仲良くならなければ遊べない」と言われ、その意味や「大切なものは目に見えない」ということを教えられる。それにより、王子は自分のバラに対する「愛情」に目覚める。王 子が星に帰るには、ヘビに噛まれることで、魂を宇宙へ飛ばす方法しかない。「僕」は王子との別れを悲しむが、「夜空の星のどこかで笑っている私を想像すればいい」と言い残してヘビに噛まれる。
  中学校の教科書にも採用されるように、一般的に同作品は子どものためのファンタジーととらえられるが、実際には「子どもの心を失ってしまった大人」に向けての示唆に富む。一糸は語る。
 「バラへの愛情は、サン=テグジュペリの妻への愛情とも取れる。謎に満ちた作品で、これまでずっとやりたいと思い続けてきた。複雑で難解な作品のため、納得しながら稽古をしても、戸惑うことがある。今回も影絵や音楽など第一級のプロが集まり、協力してくれる。人形は手作りなので、サン=テグジュペリが自ら描いた挿絵に忠実に制作。王子だけは印象を深めたくて、目を大きくした。生きているのか死んでいるのか解釈が分かれる中で、王子の命を中間的にとらえ、未来を感じる結末にしたい」
 上演日時=8月13日(月)午後7時、14日(火)15日(水)午後2時と5時。場所=シアター1010ミニシアター(10階稽古場)。料金=一般2500円、中学生以下2000円、親子ペア3000円。チケット℡5244・1011。