足立朝日

Vol.91 ミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」武田真治

掲載:2010年3月5日号
驚愕のラストに深い感動と共鳴

 武田真治の中には、色とりどりに変化する泉が存在する。深く鮮やかな赤は「魔性」。蜷川幸雄演出の「身毒丸(しんとくまる)」で初舞台を踏んだ際には、白石加代子演じる母「撫子」と宿命的な禁断の愛に燃えた。深く鮮やかなペルシアン・ブルーは「静寂」。サックスプレイヤーとしても活躍する武田の演奏は、人々を夢の世界へと誘う。アルバム「S」でその実力を実証。
 そして、この4月。武田はシアター1010の舞台で、何色の泉を観客に見せてくれるのだろうか。作品はミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」。1983年にロンドンで初演され、同年にローレンス・オリヴィエ賞を受賞。現在に至るまで27年間、ロングランを記録している。
 双子の兄弟・ミッキー(武田/藤岡正明Wキャスト)とエディ(岡田浩暉/田代万里生Wキャスト)は、訳あって別々に育つ。やがて巡り会った2人は友情を育むが、裕福なエディは社会で成功し、貧しいミッキーは失業する。ミッキーのガールフレンド・リンダ(鈴木亜美)は、悪事に手を染めて心身ともに荒んだ彼を救おうとエディに助けを求めるが、ミッキーは2人の関係を疑い悲劇が始まる……。驚愕のラストが深い感銘と共感を呼ぶ秀作。日本での初演を、武田は振り返る。「とても手応えを感じた作品でした。原作者から唯一演出を許されているグレン・ウォルフォードさんが来日。作品の舞台となる時代背景や、イギリス特有の階級制度がもたらす差別の厳しさをじっくり説明して頂いたことで、カンパニー全体が作品を深く掘り下げられたことが、うまく仕上がりに影響したと思います。一番の見どころは、登場人物の各々が選択した道が少しずつ外れていき、ラストシーンの悲劇へと向かうという作品力です。耳にも心にも残りやすい音楽も美しく軽やかです」
 武田は、早くも再演となった同作品を、新しいキャストと共にさらに深く掘り下げていきたいと抱負を語る。さらに、足立区民へのメッセージが熱い。「この作品は、遠い国の過ぎた時代が舞台になっていますが、内容は極めて今日的なモノで、日本人の我々にも自分たちの問題として受け取れる作品だと思います。是非、劇場に足をお運びください」。
 日時=4月17日(土)12時・午後5時。18日(日)12時。料金=8800円。フレンズ会員10%引き。チケット/Wキャスト問合せTEL5244・1011(シアター1010)

写真=ミッキー(左/武田)とエディ(岡田)