足立朝日

これが最後のキネマ Vol.2

掲載:2010年5月20日号
「苦い蜜~消えたレコード~」

 今回は5月初めまで都内で公開されていた密室劇「苦い蜜~消えたレコード~」。テレビでは「徹子の部屋」、ラジオでは文化放送「くにまるワイド」で取り上げられ、ミステリーファンの間では期待の作品だ。
のバー「リボルバー」のオープンパーティの日に盗難騒ぎが起きた。ビートルズの貴重盤が盗まれ、犯人らしき者はその場で捕まるが、その1年後に再び犯人捜しが始まる。探偵を名乗る男が現れ、店の常連客を対象に本格的な謎解きが始まる。
 いつものように馴染みの客はくつろいでいるが、マスターだけが落ち着きがない。その理由はマスターが書いた推理小説の「苦い蜜」が新人賞候補となり、発表の日が今夜なのである。受賞確実と信じる編集者やその他の客も電話が気になって仕方がない。舞台のリボルバーではこんな緊張感が漂う中、探偵が投げかける疑問によって事件の真相に迫っていく。
 知名度の高い俳優が多く出演。主演の探偵役に金子昇、客で元テレビ局の大物プロデューサーの田中健、編集者の池上季実子、元従業員の高橋ひとみ、芸能プロダクションの社長に島田順司、客の犬塚弘、森本タロー(元タイガーズ)など……。若手の俳優も加わり全部で14人の登場人物だが、役柄がそれぞれ年齢、職業もバラバラである。犯人像は頻繁に変わり、居合わせたメンバーもともに事件の謎を解くことで、仲間意識が生まれてくる。密室の中で怒ったり泣いたり、個性豊かな俳優陣の生身の芝居が目を見張る。
 ちなみに監督、脚本は亀田幸則で劇団「御成門」の主宰者。数多くの舞台を手掛けたが、映画では「13通目の手紙」(04年)を監督している。今後の予定は栃木のフォーラム那須塩原(5月末から)、埼玉のシネティアラ21(6月19日から)などで上映される。(児島勉)